第1章

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 物凄く穏やかな顔をしているが、発せられる声には怒気が感じられ殺意に満ち満ちていた。 「まっ……!?待て!!女性というより、お前は妹だ。妹の制服を用意するくらい何の問題もないだろ!?」 「……。言い残す事はそれだけですか?では……、逝ってください」  待てと言っても聞く耳持たずの我が妹様と3時間に渡る追いかけっこが続き、俺は限界を感じあおいの家へと逃げ込んだ事により終止符を打たれた。 「それは、敦士が悪いかなぁ」  事情を説明してからのあおいの反応に俺は納得がいかなかった。 「まず、ユウちゃんは敦士が制服を買いに行ったと思ってるんでしょ?」  ユウは、首を縦に2回振る。声を発しないのは、未だに怒っているという意思表示なのか……。  俺は、いくら教師といえ男が女生徒の制服を買いに行くのは少々無理があると思い、あおいに制服販売店に出向いて貰い購入してもらい学校まで持ってきてもらったのだ。  まぁ、サイズもいまいち分からなかったし同じ女性なら分かるだろうし俺も恥をかかずに済む。まさに一石二鳥なわけだ。 「それに、兄妹とはいえ男女よ。サイズなんてものは知られたくないってのが女心よ。敦士は女心を理解していないからこうなるの。何か反論は?」  正直、ぐうの音も出ない。女心は秋の空とはよく言うがそんな移ろい易い心なんて理解出来た事はないし理解できるとも思ってはいない。 「その……。俺が悪かった!!許してくれ……」  俺には、素直に頭を下げる事しか思いつかなかった。 「うん。それが出来る敦士は偉い!!これで仲直りだね」  あおいの言葉で頭を上げると、ユウもあおいも微笑んでくれている。それにしても、あおいは本当に凄いやつだ。素直に尊敬する。まぁ、本人に言えば図に乗るので言わないで置くが……今までに何度助けられたか数えきれないくらいだ。  俺は、あおいに出会えて、友人になれて本当に幸せ者だ。  それから、少し話をして明日に備える為に帰宅する。  途中で、ユウが何かを言った様に聞こえたが「何でもないです」の繰り返しで教えてくれなかった。 「あなたの妹になれて私は幸せです」  聞こえてはいたのだが、恥ずかしいので聞こえていなかった事にする。
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