第0章

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「……。敦士くん、もしかして失礼な事を考えてないかい?なんとなくだけど……」  底が知れない人だ……。普通じゃないのかもしれない。こちらを見た陽大さんの顔は満面の笑みだったが物凄く圧力を感じた。 「すんません……少し外で頭冷やしてきます」  俺は、逃げる様にティアーズの外に出て大きく深呼吸した。あのまま居座るほどの度胸を俺は持ち合わせていない。  春も目の前に迫り、随分と暖かくなったとはいえ夕方になればまだまだ肌寒いと感じる。俺は、黄昏た様に夕空を見上げため息を吐く。 「…………」 「ん?」  ふっと人の気配を感じて、ティアーズの中から誰か出てきたのかと思い目線を落とすと女子高生っぽい若い女性がフラフラと覚束ない足取りで歩いている。 「あっ!!お……おいっ!!」  フラフラしているから危ないなぁとか思いながら見ていた俺の前くらいで倒れかけたので慌てて支えた。支えながらに細すぎる彼女の腕や身体に重たさを感じない。明らかに不健康そうで……無理なダイエットでもしてるのか?なんて考えていた。 「あーつーしー!!主役が居ないと盛り上がらないよー?……って、敦士!?何してるの!?」  タイミング悪く出てくるあおいに、俺は何も反応する事が出来なかった。後から追うように出てきたレオナさんに、とりあえず中に入りなっと促され倒れた彼女を抱えティアーズの奥の部屋に通してもらった。 「で、あの子は誰なの?」  彼女の介抱をレオナさんに任せティアーズのカウンターに腰を掛けた俺に、あおいが質問を投げかける。誰って言われても俺も聞きたいくらいなんだが……。俺は、ティアーズの外に出てからの経緯をあおいと陽大さんに説明した。 「栄養失調とかなのかもね……。若いのに無理なダイエットで栄養失調っていうのはよく聞くよね。」 「陽大さんも、そう思いますか?抱えた時、軽すぎたんですよね……」  みんな見ず知らずの彼女の事を心配している姿を見て、本当に優しい人たちだと再確認した。こんな人たちと知り合いでいられる俺は幸せ者だと思う。 「敦士……。あの子、虐待か強姦か……とりあえず何らかの形で暴力を受けてると思う。身体中に痣があるのを確認したよ……」
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