第0章

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 介抱してくれていたレオナさんが、奥から戻り深刻な顔つきで衝撃的な発言を俺は受け入れる事が出来ずにいた。俺の隣にいたあおいも同じなのか目には涙を浮かべ手で口を抑えていた。なんの変哲もない幸せな毎日を送っていた俺たちには衝撃的な現実だった。虐待や強姦は、日々起きている事だと知りはしていても教員として働いてる学園では一切起きておらず……どこか別世界の話の様に受けていたのかも知れない。俺は、悔しくて握りこぶしを解けずにいた。 「あ…あの…ここはどこですか?」  ふと声のする方に目をやると先ほどの女の子が立っていた。俺もあおいも声を発する事が出来ず質問に答える事が出来なかった。 「やぁ。お目覚めみたいだね。ここは僕と彼女の喫茶店でティアーズといいます。なんでここにいるか覚えてる?」  こんな時に不謹慎かもしれないが、穏やかな口調で彼女の質問に答える陽大さんは、カウンセラーか何かやっていれば良かったのではないだろうか?と考えてしまった。 「すみません。私、何も覚えてないんです……」 「何も……って、あなたの名前は?家の住所は?」  さらにティアーズに衝撃が走る。質問責めにするレオナさんを陽大さんが止め彼女の方を静かに見つめると彼女は横に首を2回振る。 「き……記憶喪失?」 「その可能性もあるね……。君の持ち物は何もないのかい?財布とか、学生証とか……」  彼女は、陽大さんと会話を続け自分が記憶喪失かもしれないと察したようで陽大さんの問いかけにポケットに手を入れ何かを取り出した。 「カードケース……?中身は何もないみたいだけど……定期か何かを入れていたのかな?名前は、クガユウさんかな?」  陽大さんが出されたピンク色のカードケースを俺に見せながら名前が入っている所を指さす。名前と思われる文字は「空閑 悠」と女の子らしい丸みのある文字で書かれている。 「君の事は、とりあえずユウって事でいいかい?」 「分からないですけど……理解は出来たからユウと呼んでもらって構いません。それで、私は何故記憶がないんでしょうか……?」  ユウは、俯いてしまい挙句には屈みこんでしまった。俺や陽大さんは何も言う事が出来ず黙り込んでしまい、ユウの表情が更に曇っていくのが見ていられなくなる。 「とりあえず、考えるのは大人に任せて!!君は、レオナさんが淹れてくれる超美味しい珈琲でも飲んでなさい」
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