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あおいの気配りの上手さは、尊敬してしまう。気まずい雰囲気を一気に明るく変える事の出来るあおいには、何度助けられて来ただろうか……。
ユウは俯いていた顔を上げてカウンターへと向かい、レオナさんは珈琲を淹れ始めた。
「ユウちゃんの事は女性に任せて僕らは外で今後の事を少し話そうか……」
陽大さんが小声で俺にしか聞こえない様に呟いて外へと向かうのに俺は着いて外へと出た。
外に出てすぐに陽大さんは大きく伸びをして深呼吸をしているようで、俺はため息が思わず出てしまった。無意識にため息が出てしまうほど非日常的な出来事に直面して俺のココロは疲れ果てていた。
「このまま警察に行っても何も変わらないだろうと、僕は思う。病院なんかに送られて入院させられる事になるだろうね……詳しくはわからないけど……」
「それしか方法がないと思います。記憶喪失で何も覚えていないのは、身体中の痣と関係があると思うんです。でも、忘れたいほどの記憶を思い出させるのは少し酷な気もしますよね……」
何かしてやれる事は出来ないのか……。俺は頭の中で何度も何度も同じ言葉がリピートしていた。
「中へ戻ろうか……。僕たちには何も出来そうにない。一緒に警察へと行くくらいしかね……」
陽大さんが立ち尽くしている俺の手を引いて中へと戻って行くのになされるままに俺も中へと戻った。その間中もさっきの言葉が頭の中をリピートしている。
中では、女性3人が珈琲について話しているようでユウは美味しい珈琲について「感動した」と語っている。その表情はとても明るく楽しげでさっきまでの俯いた表情はどこにいったのやらと俺は小さくため息を吐いた。
「なぁ……ユウ。お前の記憶が戻るまで、俺と一緒に暮らさないか?俺とお前、クガ同士妙な縁がある気がするんだ。入院とかするよりも俺が学校にも通わせてやるし面倒見てやるからさ……俺と一緒に暮らさないか?」
俺は、衝動的にユウに向かって声をかけていた。自分でも驚いているのに周囲の顔に目配せすると全員が口を開けて驚いた表情をしている。そんな光景に思わず頬が緩んだ。
「クガさん……。もしかして親族の方ですか?」
「いや、空閑と玖珂で読みは同じでも漢字が違うから親族ではないと思うけど……って、俺の親戚に君がいるんなら一緒に暮らす必要ないと思うんだけど?」
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