第1章

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 ユウと共同生活をスタートして、俺はとにかく忙しかった。ユウが生活する為に必需品を買い揃えたり、理事長にユウの編入手続きをしてもらう為に頭を下げたり、部屋の整理を行いユウの部屋を大掃除したり……。  俺だけではどうにも出来ないと見越されたのか、あおい、陽大さん、レオナさんが手伝いに来てくれた。 「みなさん、ありがとうございます。得体の知れない私の為に色々として頂いて……」  ユウは、俺たちに深々と頭を下げて謝辞をくれる。 「ユウ……。そんな他人行儀では困るな。俺とお前は兄妹なんだ。もう少しフランクにしよう?」 「そうそう!敦士の妹なら私の妹も同然だよ。」 「敦士くんには、いつも店に来てもらってるからね。僕らも出来る事くらいなら何でもするよ。」 「あんまり気を遣いすぎてちゃ、やってけないよ?子供は大人に甘えておけばいいのさ」  口々にみんながユウに言葉をかける。俺の回りの人間の優しさに改めて幸せ者だと思った。ユウにも沢山の人の優しさに包まれる喜びを知ってもらいたい。その時、強く決心した。俺は、本当の兄以上に妹を幸せにしよう……と。  その日の夜、あおい達は俺の部屋で転居パーティと言いながら呑み明かし雑魚寝で泊まった。ユウの表情も明るくなり俺は安心していたんだけど……  夜も更けて深夜から明け方になろうとしている位の時間に物音がした様な気がして俺は目を覚ました。物音は気のせいかも知れないけど、何か気になって部屋を出る。 「…………。」  ベランダに出ているユウの姿を見つけて俺は言葉を忘れたかのように声を発することが出来なかった。月明かりに照らされたユウは、なんとも妖艶で……とにかく綺麗だった。
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