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気がつくと、暁は建物の二階に倒れていた。
左腕は赤黒くに変色し、腫れ上がっている。折れてしまったのだろう。
「くそっ…」
(まさかあの男まで薬を飲んでたなんてな…。)
状況は最悪。
駆馬たちとは離れてしまったし、暁の今の状況から考えて、あの感染者に勝てるとは思えない。
「あーあ、端末までぶっ壊れやがった」
端末は衝撃で反応しなくなっていた。これでは応援も呼べない。
ー…が、退くわけにはいかなかった。
車二台が止まれるスペースがある所を探すため、比較的道が広くなる大通り寄りの道を選んで来てしまったため、こののまま放っておいたら感染者が大通りに出てしまう危険性があった。
感染者の存在が露見したら一大事である。
「なんとかここで止めねぇとー…!!おい、お前!!俺が相手だ!!」
「グオオオオオオオオオオ!!!!」
暁のいる二階に突進してくる感染者。
暁は覚悟を決め、武器に手をー…
「あれ??」
背中に、暁の武器がない。
「はああああ!?どこ行った俺の鎌!!?」
「グオオオオオオオオオオ!!!」
「ちょ、たんま!!今はヤバイ!!!」
感染者の右ストレートが暁のいた建物の二階を吹き飛ばす前に、なんとか地面に着地。
幼い頃から駆馬の訓練を受けているため、このくらいは朝飯前である。
(あった!!)
感染者の後方、暁の愛用の武器である大鎌がころがっていた。
「グオオオオオオオオオオグオオオオオオオオオオ!!!!」
「っち!!」
感染者の後方に回りたいが、こう一方的に攻撃を食らっていては動けない。
「邪魔、だああああ!!!」
降り下ろされた腕に蹴りかかる。ー…が、体格差がありすぎる。あまり効果はない。
「これはやばっ…「グオオオオオオオオオオ!!!!」
一瞬、反応が遅れた。
「!?ぐ、は…」
暁の脇腹に感染者の拳がめり込む。血を吐き、暁は倒れた。
(やべぇ!!)
痛みで体が動かない。折られたあばら骨が内臓を突き刺してしまっているのだ。
感染者が拳を振り上げる。とどめだ。
「く、そ……。」
グシャアッ!!!!
血が吹き出し真っ二つになったのはー…暁ではなく感染者の方だった。
「ー…え、駆馬…」
(違う。駆馬じゃないあいつの能力は炎。こんなふうに敵を倒す能力は無い!)
「誰だ!!?」
そこに立っていたのは、
暁とそう歳の変わらない黒髪の少年だった。
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