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「うわあああああ、うわああああああああ!!!」
「発見したときはもうこの状態で…。」
壁にもたれるようにして座り込んでいる男は、顔を覆い絶叫している。
「おい、周辺はどうなってる。」
「はい。周辺は機械兵が閉鎖し、残りのメンバーで被害確認を行っております。」
「了解。お前ももう行っていいぞ。」
威勢よくあいさつし、散っていく隊員達。
「ー…でぇ、こちらさんか」
駆馬が男を見ると、「ひぃっ!」と怯えるように縮こまった。
「あり?」
「しかたないですよ。駆馬目付き悪いから……ほら。持ってました。」
ガサゴソと男の私物らしき物を漁ると、中からラムネくらいの粒が入った小袋が出てきた。
「決定的だな…。紫樹、表に護送車呼んどけ。」
「了か…「全部てめぇら政府の連中が悪りぃんだあぁあぁ!!!」
急に男は立ち上がり、殴りかかってきた。
………紫樹に向かって。
「やめろ馬鹿!!!」「紫樹さん!!」
「いっ…でえええええええええええええええ!!!」
グギリ、と、鈍い音。
「どうやら反政府運動をしている連中の一人のようですね…。暁君。すみませんが救急車も呼んでおいてください。関節を外してしまったようです。」
「……了解です。」
「だからやめろって言ったのに…。」
紫樹は細身に銀の長髪で、女性に間違えられることがあるほど美人だ。
……が、その実恐ろしいほどに武道派の上、手加減というものを知らない。
「紫樹…関節はいろいろまずいって…。」
「正当防衛。」
紫樹はさらりと答えた。
「まぁでもこの男も今ので頭の血も下りたでしょう。」
「いや、やりすぎだって。逆に血の気が無さすぎて顔面蒼白になってるんだけど。」
可愛そうに男は手首を押さえて震えていた。
「おいお前、この薬どこから入手した。」
「知らねぇよ!あいつっ…あいつが勝手に持ってきて!!飲んだ瞬間に…な、なんなんだよあれ!!あれ飲めばお前らと同じ能力が使えるんじゃっ……!?「落ち着け。」
男はさらにわめきだす。
「落ち着いていられるか!!あれ飲んだらあいつ……黒い化け物になったんだぞ!!?」
「………やっぱりそうか。」
……そう。あの感染者と呼ばれる化け物は、元は我々と同じ人間なのだ。
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