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「ふざけんなよ!!お前ら政府が国民に秘密でこんな薬製造しやがって……!!この存在をネットに流せば、一発でアンダーワールドはおわ…ぐはぁっ!!!!?」
紫樹に関節を外された可愛そうな男は、今度は腹を蹴られて吹っ飛ばされた。
「それは困るなぁ、感染者のことも、この薬のことも秘密なんだし。」
駆馬だ。
「おまっ…こんなことして、ただですむと…」
「安心しろよ。ネットワーク上いくらこの薬のことバラしても見事に揉み消されるからよ。エロ動画なみに規制かけられてるぜ。」
「駆馬、例えが下品ですよ。」
腹と手を庇い横這いになる男は芋虫のようだった。
「な、なんなんだよこの薬はぁぁぁぁぁぁ!!!?」
駆馬は楽しそうに笑う。いや、楽しんでいるのだ。
「この薬はevolution compusion94…とよばれる代物でな…俺の炎の特殊能力もこいつで手にいれた。」
もし、またあの自然災害アンダーワールドで起こった場合、人類は高い確率で全滅する。
それを回避するために作られたのがevolution compusion94。通称『EC94薬』。強制的に人類を進化させる薬。
骨、皮膚、臓器…物によっては脳波まで刺激し、新たな特殊能力をもった人類として変貌させる。
「でもまだまだ試作段階でな…軍部でも、部隊長と部隊長補佐。あとは一部の銀ランクにしか使用を許されてないんだ。」
震えながら男は駆馬をにらむ。
「ちなみに1から94までの特殊能力が選べてな、数字が若いほど服用したときに死ぬリスクが高い。」
「駆馬、そのクスリ何番?」
「これは…あぁ65番だな。」
「65番!!?全然若い番号じゃねーだろ!!?」
「阿呆。あのなぁ、この薬は強制的に人体改造されるようなもんなの。半端な精神力で耐えられないから軍部のやつらで実験してんだろーが。」
「薬を飲んだやつの末路は三つ。特殊能力を得るか、体が耐えきれず苦しんで死ぬか、中途半端に進化した肉体のまま自我を失い、感染者っつー化け物になるか。」
「い、いかれてやがる。よくそんなもん飲めるな…!」
「言っとくが最終目標は国民全員に飲ませることだぜ?」
紫樹がそっと駆馬に目配せする。これ以上の情報漏洩は違反だ。
『駆馬部隊長!護送車、救急車到着しました!』
無線から連絡。この男にとっては死刑宣告のようなものだ。
「ほら、お迎えが来たな。」
本日はあきあきするほどの快晴だ。
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