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『申し訳ありません部隊長!』
無線から聞こえるのは謝罪の声。どうやら先ほどの隊員のようだ。
護送車と救急車を呼んだのはいいものの、S- 25地区は地図が宛にならない。そのため、二台とも立ち往生しているようだった。
「おー。気にすんな。気長に待つさ。」
「いいのか?部隊長がこんなとこでサボってて。」
「サボりじゃねーの。休憩なの。俺だってヤル気出すときあるぜー………多分。」
「ほう、ではあの書類の山もそのヤル気とやらで早く片付けてください。私の仕事が進みません。」
「……ワーカーホリックめ「何か?」
……あきれた大人である。
『あっ、それともう一ついいでしょうか?』
「ん?何だ。」
『あの、先ほど何故か暁がいたんですけど…。銅ランクの暁が何故現場に?』
びっくーーー!!!
((やべぇ、バレた!!!))
「いや、これは、あれだよ、な、なぁ暁!!!」
「挙動不審すぎるぞ駆馬!!いや、違うんです。俺がここに居るのは…「護送車がここまで来れないことは想定内だったので、ここら辺の地形に詳しい暁君を呼んだんです。」
『さすが部隊長補佐です!いやあ、てっきり暁を感染者との戦闘に参加させてたのかと思いましたよ!』
………すみません。そこ通りです。と、喉元まででかかった言葉を飲み込む。
とりあえずこの場はやり過ごせたようだ。
「紫樹…お前策士か。」
「気転のきく部下でよかったですね駆馬。そうでなければ暁君と仲良く降格でしたよ。」
そういうが、目は笑っていない。
「と、いうわけで暁君。君にはこの男を護送車まで送り届けてもらわなくてはならなくなりました。」
「駆馬たちはこれからどうするんです?」
「ん…、とりあえずはこの辺の捜索続けねーとなぁ。まだ仲間いるかもだし。」
あくびをしながら言う。完全にヤル気がない。
「そうですね、あの感染者に薬を売り付けた方も見つけなければいけませんし。」
そう。問題はそこなのだ。
厳重に保管されているはずの薬を持ち出すのは容易ではない。
が、事実薬は持ち出されている。しかも、このあまり身なりのよくない男でも手が出せるような安価な値段で…だ。
(いったい誰が…。)
「頼めますか、暁君?」
「うっす!!……ん?」
連れていくはずの肝心な男の顔色が悪い。
まるで何かに怯えてるような…。
(ま、いっか。)
暁は男を連れて歩き出した。
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