第一話 アンダーワールド

9/13
前へ
/19ページ
次へ
「とは言ったもものなー」 S- 25地区のどこかにはいるというのはわかっているものの、暁の土地勘でもそれを瞬時に場所を割り出すのは難しい。 (とりあえず、あのでかい車二台が止まれるスペースのある場所…だよなあ) うーん、と、考えながら、男の手錠をひっぱって歩く。 相変わらず男の顔色は悪い。 「っ………………だ…」 その上、何かをぶつぶつつぶやいている。 「お前…大丈夫か?」 暁が足を止めた瞬間、男は地面に血を吐いた。 「なっ!?」 汗が吹き出し、眼球はぐるぐる回りだした。 これは、やばい。暁はそう直感した。 「お前らが…お前が…政府がああああ!!!!!」 男の体はボコボコと膨らみ、弾け、血を吐き出す。 それを繰り返すうちに、男のからだは黒い塊になった。 ………感染者。 気づいたときには暁は建物の窓に叩きつけられていた。 「ぐはっ……!!?」 ーーーーーーーーーーーー 「遅いですね…」 紫樹は端末をみて呟いた。 「まだ連絡ねーのか?」 「はい。おかしいです。迷ったにしてもそろそろ連絡があってもいいのに。」 「心配性。ほんとオカンだなお前。」 「部下の心配もまともにできないダメ上司とは違うんです。」 紫樹は心配そうに端末を見つめる。 訳あって暁は幼いときから軍部にいる。あげく彼の身元保証人はこれも訳あって駆馬なのだ。 その縁で暁のことは幼いときからよく知っている。心配して当然である。 「紫樹」 「なんですっ…か?!」 不意に駆馬が端末を投げた。 「隊員が何か見つけたらそこに連絡入るようになってる。」 「知ってますけど。」 「じゃあ話は早い、今からお前がここの責任者なー」 「は、はぁ!?ちょ、待ちなさい駆馬!!」 駆馬、逃亡。 「まったく…。どっちが心配性ですか。」 紫樹はしぶしぶ端末を身に付けた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加