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「とは言ったもものなー」
S- 25地区のどこかにはいるというのはわかっているものの、暁の土地勘でもそれを瞬時に場所を割り出すのは難しい。
(とりあえず、あのでかい車二台が止まれるスペースのある場所…だよなあ)
うーん、と、考えながら、男の手錠をひっぱって歩く。
相変わらず男の顔色は悪い。
「っ………………だ…」
その上、何かをぶつぶつつぶやいている。
「お前…大丈夫か?」
暁が足を止めた瞬間、男は地面に血を吐いた。
「なっ!?」
汗が吹き出し、眼球はぐるぐる回りだした。
これは、やばい。暁はそう直感した。
「お前らが…お前が…政府がああああ!!!!!」
男の体はボコボコと膨らみ、弾け、血を吐き出す。
それを繰り返すうちに、男のからだは黒い塊になった。
………感染者。
気づいたときには暁は建物の窓に叩きつけられていた。
「ぐはっ……!!?」
ーーーーーーーーーーーー
「遅いですね…」
紫樹は端末をみて呟いた。
「まだ連絡ねーのか?」
「はい。おかしいです。迷ったにしてもそろそろ連絡があってもいいのに。」
「心配性。ほんとオカンだなお前。」
「部下の心配もまともにできないダメ上司とは違うんです。」
紫樹は心配そうに端末を見つめる。
訳あって暁は幼いときから軍部にいる。あげく彼の身元保証人はこれも訳あって駆馬なのだ。
その縁で暁のことは幼いときからよく知っている。心配して当然である。
「紫樹」
「なんですっ…か?!」
不意に駆馬が端末を投げた。
「隊員が何か見つけたらそこに連絡入るようになってる。」
「知ってますけど。」
「じゃあ話は早い、今からお前がここの責任者なー」
「は、はぁ!?ちょ、待ちなさい駆馬!!」
駆馬、逃亡。
「まったく…。どっちが心配性ですか。」
紫樹はしぶしぶ端末を身に付けた。
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