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「さて、蒼暁ちゃん。」
「何でしょうか。」
翌朝、昨日と同じ着物ではない格好でフードを被った僕と、藍色の浴衣をきた宗次郎。
そしてミツ姉さんの三人で朝ご飯を食べていた。
「・・・さて、蒼暁ちゃん。あなたはこれから、行くところが無いのよね?」
唐突な投げ掛けに少しビックリしたが、お茶碗を置いてミツ姉さんの方を向く。
「・・・そうですね。」
「じゃあもう・・・宗次郎について行っちゃったら?」
その言葉に私が反応するより先に、宗次郎が反応した。
「でもミツ姉、彼処って男子しか「いーの!あんたがいるじゃない。というわけで、宗次郎と同じ荷物ね!あっ、着物は男の子用のしか入ってないから、そうねぇ・・・宗次郎が12歳になった時と、次お金が貯まった時にでも買い替えなさい。」
そう言って宗次郎と同じ・・・だけど、緑ではなく、青の袋を僕にくれた。
「ミツ姉さん、ありがとうございます。」
「いえいえ。・・・じゃあ、名残惜しいけど、もうお別れよ。」
「ミツ姉・・・」
宗次郎が少し眉を下げた。
「宗次郎、そんな顔してると、天国のお父さんが竹刀片手に化けて夜中殴り飛ばしにくるわよ。」
「ミツ姉、話し方といい、事の細かさといい・・・現実的に思えてくるからやめて欲しいな。」
「あらぁ?わかんないわよ?」
「もう、ミツ姉!」
・・・僕は、目の前で繰り広げられる兄弟喧嘩が、少し羨ましく思えた。
「さぁ、お巫山戯もおしまい。早く行かないと怒られるよ?」
そう言ってミツ姉さんはクスリと笑い、荷物をもった僕達の背中を押した。
「じゃあ、ミツ姉
行ってきます。」
宗次郎は、にっこりと笑みを見せてそう言った。
多分帰らないであろうこの家に、『行ってきます』と。
ミツ姉さんが少し目を潤ませて「気を付けて。」と返すのを見て、僕は少し控え目に「ありがとうございました」とだけ言って、宗次郎と並んだ。
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