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「・・・ねえ蒼逢ちゃん。ちゃんと僕についてきてる?」
「ちゃんといる。あと、その問いかけは何回も聞いた。」
人混みを縫って進んでいるからか、どうも宗次郎は僕がいるかどうか心配らしい。
4回くらい隣にいる僕にむかってこの質問を繰り返している。
あと、ちゃん付けを凄くやめて欲しいんだが・・・
僕は宗次郎の袖をクイ、と引っ張り振り向かせる。
「ん?なに、蒼逢ちゃん。」
「ちゃん付けはやめろ。殴り飛ばしたい衝動に駆られる。」
「・・・ふーん。じゃあ条件ね。」
僕の発言に少し焦りを見せつつ、そう言って僕の手を握るとそのまま歩き出した。
振り払おうか迷ったが、何と無くやめた。
「一つは僕に心を閉ざすような態度をいずれ取らないようにすること。それと、困った時・寂しい時は僕を呼ぶこと。分かったよね?じゃあもう少しだから行こう、蒼逢。」
「・・・うん。」
了解を得るにしては随分と強く決定的な口調だったが・・・
ちゃん付けをやめたからよしとする。
そんな会話を最後に手が離された後、何故か僕は道行く人の波に押され・・・
どんっ。
「ぃって・・・?一人だ。」
現在、宗次郎とはぐれてしまい、迷子の蒼逢です。
最後に手を離してしまった事が間違いのようだ。
はぐれて初めて、風が冷たいことが身に染みて、思わず自分の身体を抱いて蹲った。
「ッ・・・ヒック・・・そおー・・・」
・・・一応いうが、僕じゃない。
宗次郎も確かに『そお』に近いけど、泣いてるのは僕じゃない女の子だった。
綺麗な水色の着物を着て、髪を耳より下で縛った、女の子。
「どうした。」
近寄ってそう問いかけると、女の子はしゃくり上げながら、赤くなってしまった目元をそのままに、僕を見た。
「おに・・・ちゃ、だれ?」
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