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お兄ちゃんって・・・僕しかいないんだけど。
「・・・僕のこと?」
そういって自分を指差すと、女の子はコクリと頷く。
つまりは、僕はお兄ちゃんと見なされたと。
・・・まぁ、いいや。
「誰とはぐれた?」
「そーく・・・アヤ、の・・・友達・・・」
要するに、この子はアヤっていう子で、友達とはぐれたわけか。
って、迷子が迷子の相談受けてるってどうかと思うが。
まぁとりあえずこの子の連れを捜すか、自分を優先・・・はないな。
「その友達のこと教えて。一緒に捜してや・・・あげる。」
強い口調は何と無く避けておく。
アヤちゃんは僕の言葉に頷くと、途切れ途切れに話し出した。
「藍色、だけど、アヤとおなじ浴衣、着てて、背は、アヤとおんなじ、くらい・・・名前はソウヤ、って、言うの。」
「へぇ・・・じゃあその子もその浴衣なんだ。」
「うん・・・あ、男の子だよ。」
「・・・わかった。じゃあ、ちょっと待って。」
少し精神を耳に集中させて、子供の声で、できれば人の名前を呼んでいる声を中心に聞きながら歩くことにした。
「アヤちゃん、だっけ。どっちの方向から来たとか分かるか?」
「ううん・・・アヤ、大人の人達に押されてここにきたの・・・」
「そうか・・・じゃあ、捜しに行こう。」
僕は、アヤちゃんの手を優しめに握って歩く。
「・・・ねぇ、お兄ちゃんは誰なの?」
「僕?僕は・・・沖田 蒼逢。実は僕も迷子だ。もう一人一緒に来てた。」
「そっか・・・じゃあ、蒼逢お兄ちゃんのお友達も捜さなきゃ、だね。」
そこでその子は、初めて笑った。
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