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暫くして、僕たちは一軒の家に着いた。
僕がさっきの野犬に背中を切りつけられたためだ。
移動は宗次郎が僕を負ぶって走ってくれた。
表札には『沖田』と書かれていることから、ここが実家なのだと察した。
「ただいま!傷薬と包帯ちょうだい!」
戸をガラリと開けてそう言うと、僕の靴を脱がせたあとに自分も草履を脱ぎ捨て、部屋に駆け込んだ。
「宗次郎?!どうしたのその子!」
お姉さんなのか縫い物をしていた手を止めて目を丸くしている。
「どうでもいいから・・・今晩まではここの家の子供でしょ?」
「・・・わかったわ。ほら!傷薬と包帯はあたしがやるわ。」
!・・・そうか。
この年は確か、沖田総司が試衛館に預けられる年。
本来なら宗次郎は明日ここを完全に出て行くのだ。
「着物持ってくる。」
宗次郎が棚から服を探し出して僕の近くにおいてくれた。
「ちょっと宗次郎!これ女の子用じゃない!」
何かと思って見れば、九歳位の女子に合うようなきれいな赤い着物。
着たことはないが・・・
「い、い・・・です。僕、女ですから・・・」
「・・・!」
えっと・・・お姉さん。絶句しないでほしいんだが・・・
「えっと、ごめんね?でも、着物は女の子用じゃないほうがいいかも。」
「なんで?」「なぜ・・・?」
「・・・あのね、蒼暁ちゃん。あなたは男の子の格好のほうが得なのよ?」
何が得なのかは解らないが、ともかく僕に着物を貸してくれるらしい。
「さて、包帯巻くから、宗次郎はあっち向いてなさい。」
そういって僕の服を脱がせてくれた。
が、僕の上半身が露になったとき、お姉さんの手が止まった。
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