1、はじまり

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突如として耳に響いてきたのは「ピピピピ…」という機械音だ。まだ完全には覚醒しきれていない頭で目覚まし時計の音だと理解するのに数秒かかった。 右腕を伸ばし少し耳障りな音の元凶を止める。 現在の時刻5:30。 しばらくしてベッドの布団から出ようと思い上体を起こす……が、なぜか起き上がれなかった。なぜか体が重い。 具体的にいうならば左半身が。不思議に思い視線を左へと向ける。 そこにはよく見知った女子の寝顔があった。 つまるところ、一緒に寝ていた。 「はっ、あわわわ、な、なんで俺はこいつと一緒に寝ているんだ!?」 みたいな正しい(?)リアクションはとらず、代わりに軽く嘆息する。 このまま腕に抱きつかれた状態では起きようにも起きられないので、寝ているこいつを起こそう。 「今起きたらキスするよ?」 言った瞬間 「はいっ、起きた!起きました!!さあ!おはようのチュー、カモン!」 とりあえず脳天チョップを叩き込んだ。 「い、いたい……さすがに脳天チョップは痛いよ。空」 「朝っぱらから人の布団に潜り込んでるやつに文句を言われる筋合いはありません。まあ、とりあえずおはよう。日奈」 「うん、おはよー空。でも失敬な、朝から潜り込んでなんかいないよ。昨日空が寝てからだよ!」 そう言いながらドヤ顔をしてくる。 もう一度チョップしてやろうかと思ったがやめることにする。時間の無駄だ。 もう一度だけため息をつき、ベッドから降りる。 ちなみに日奈――ドヤ顔しているやつ――が起きたと同時に腕の拘束はとかれていた。 布団から出るとまだ4月に入ったばかりということもあり少し肌寒い。 さっさと着替えようと思い部屋のクローゼットに向かう。 さて、ここで簡単に自己紹介をしておこう。 俺は斉藤 空(さいとう そら)。身長はそこそこ高い。特筆すべき点としては頭髪の色が某死神代行高校生並みの橙色で、瞳の色が青色だということか。 どうやら俺の産みの母親はハーフだったらしく、髪の色と瞳の色はそこから来ているらしい。まあ、そうなると俺はクォーターになるわけだが。 そうそう“らしい”という曖昧な表現をしたのにはわけがある。俺の産みの母親はすでに他界している。父さんにもどこの国の生まれかは話さなかった。 いや、話せなかったという方が適切か。どうやら捨て子だったらしい。 自分語りはここまでにしておこう。
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