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世話になっている桜井の家から使いを頼まれ、届け物を無事届けたまではよかった。
遅れたり何かあったりしてはいけないと、事細やかに指示を受け、その通りにそこへ向かったからだ。
その後、使いに行った先の家で折角送りの者をつけようかと申し出てくれたにも関らず、休暇に入ってしまうついでで、直接桜井の家に戻る訳ではないからと断ったのがいけなかった。
元の道を戻るのではないのだから、意地を張らず途中まで送ってもらえばよかったのだ。
そうすれば馬を借りることもできたし、道に迷うこともなかったに違いない。
子供の使いでもあるまいにと申し出を断ったというのに、その上田舎の自然が懐かしいと寄り道をして迷ったのでは子供以下だ。
青年はもう一度溜息をつき、とりあえず足下に見える村へと下りてみることにして、緩やかな斜面へと歩を進めた。
日の高いうちに今夜の宿を探さなくてはならなかった。
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