駆け巡るのは

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「堪ンない」  躰の感覚が研ぎ澄まされてゆく。目も、耳も、手も、鼻も、全てが感知する。甘い匂いが脳内を侵食する。眩暈のような、でも心地いいような。 「食べちゃいたいくらい可愛い」  思わず――喉を鳴らした。その血肉を貪り啜ってしまいたい。緋色の幻がチラついて離れない。頭を撫でながら、自らを宥める。 「ん?」  覗き込んで甘えるなんて反則。ああ、もう。 「――後悔、するなよ」  噛み付くように、キスをした。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加