少年

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誰かの声が聴こえた気がした 何を話しているのかはわからないが 数人に 囲まれている気がする 『確か バイクに乗ったまま 埠頭から 海にダイブした筈… また 誰かに救助されてしまったか…』 別段 少年が 自殺志願者と言うわけではないが ―死ねたら 楽だろうな― と ボーッと思う時が度々あったのは事実で 少年の中の闇は 他人並みに 心を蝕んでいる程度のモノであった 17才 何をしていても愉しい筈の年齢 どこかで 少年の中の闇は「愉しい」と言う感覚を麻痺させていた 其が 「両親の離婚」なのか「教室での孤立」なのか はたまた「其等総て」なのか 『オイ コイツ「イシキ」ハアルノカ?』 誰かが話している… 『サアナ 「ミャク」ハ タシカニ アルノダガ… オキアガル ホショウ ハ デキカネル ト ダケ ツタエテクレ』 聴いたことの無い 言語… ドイツ語の様な 力強さの中に 単語か 接続詞かは不明だが 柔らかく しかし自分が話せば 舌を噛みそうな 例えるなら そう ぐにゃぐにゃした感じの言葉が混じり合い 到底 自分では話す事が 困難に思える そんな言語 「どんな奴が会話しているのだろう」 そう 思った… だからと言って 簡単には身体は動かない 当然だ バイクごと 海面に叩き付けられたのだ ただのダイビングの失敗とは 理由が違う 時速100キロ近いスピードに自分の体重 ともすれば 海面を「水切り遊び」の小石の様に何度も跳ねたかもしれない 全身打撲は 当たり前で 何処かの骨を 骨折しているかも知れない いや しかし待てよ と 少年が 五体に気を巡らせてみても 「痛い場所」が見当たらない 筋肉の張りすら感じられないのである 恐る恐る 片方づつ 目を開けてみる
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