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ボンヤリと 薄暗く 冷たい空気
微かに見えるのは 石積みの壁と 太く古ぼけた 梁や柱
小首をもたげて 辺りを見渡すと
大木から 切り出されたであろう
無骨に厚い 一枚板で仕上げられた 大きなテーブル
その脇の腰掛けに 背を向けて座る人影
「どうやら 天国では無いらしい」
と少年が 思った時
背を向けた人影の更に向こうから 一回りは大きいであろう もう一つの人影がユラリ と 立ち上がった
何かを言って 此方を指差し
背を向けて座る影に 話し掛けている
慌てた様子の影は 振り向くと 眼を見開き 驚愕の表情を見せたが
ふっと 笑顔を此方に向けて 話し出した
『此方の…世界の…… にん… 人間 で わ 無いな』
何とも たどたどしい まるで 覚えたばかりの日本語で 辞書を観ながら買い物をする 観光客の様だ
『此処は 何処かの国なのでしょうか?』
『いや…』
少年の質問を 困り顔で否定しながら テーブルに両手を付き 立ち上がると
ゆらり と風が吹く様な 流れる仕草で 歩み寄ってきた
身を起こしベッドの端に座り直した少年の 二歩程前まで近づくと 緩な速度で膝を折り
少年の視線の高さまで 屈んでみせる
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