黒き薔薇を貴方に

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 わたくしがこの世で愛した、ただ一人の男の話をいたしましょう。  貴方…貴方はわたくしが全てを捧げた、唯一の人です。    わたくしは、さる公爵家の一人娘として育てられました。年上の兄が一人おりますが、わたくしとは全く似ておりません。いいえ…兄だけではなく公爵である父も、母もわたくしとは全く似ていないのです。  いつの頃からか、わたくしは自分が公爵家の実の娘ではないことに気付いておりました。  真実こそはっきりとは知らされることはございませんでしたが、育ての親である公爵と、公爵夫人はわたくしを実の娘以上に、大切に可愛がり慈しんでくれました。  
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