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そんな大学生活で、ぼくは恋人を作らなかった。前世の記憶があるからか、前世から恋慕う彼女に逢ってから恋人を作るか決めようと思っていたから。確実に何故か『現世』で逢える気がしたから。生まれ変わったら、変えたかった事があるから。
そして、 … ぼくは大学卒業後、佐脇料理教室に佐脇胡桃の助手としてバイトしている。卒業後、就職難の時代。大卒だからって容易く就職出来ない。何百もの面接と試験を繰り返しても、就職に有利な資格を取得しても、就職難な時代。ぼくは、独り暮らしを切望した。旅館で働く父親、料理教室をやりながらテレビにも出る母親の帰りを家で一人で待っている生活。学生時代は、平気だった。部活とか勉強とかで『一人きりの空間』を紛(まぎ)らわしてきたから。もう、一人きりで親の帰りを待つ暮らしは嫌だ。朝帰りする親を心配する毎日は嫌だ。留守番電話を聞いて食材を買う毎日は嫌だ。
自分だけの空間、自分の為の生活がしたかった。高校と大学時代はバイトもしていた。親にも祖母にも言わずに、内緒でバイトしていた。顔を隠して偽名で、喫茶店のウェイターとか皿洗いとか工事現場とか履歴書で面接する箇所でバレない場所を選んでバイト頑張った。コツコツ貯めた金では足りなかった。誠一郎叔父さんに頼んでみた。駄目なら、諒叔父さんに頼んでたけれど。誠一郎叔父さんはアメリカに出向中でアメリカ在住。つまり、日本には帰って来ない。アメリカ在住前に住んでいた、マンションの一室。ダメ元で頼んでみたら、オッケー貰った。丁度探していたらしくて。
だから、ぼくは今誠一郎叔父さんが住んでいた部屋に暮らしてます。
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