2人が本棚に入れています
本棚に追加
風が吹いている。
君に届く風ならば、風に乗って君に逢いに行こう。
風が荒れている。
君に届く風ならば、君を困らす風ならば、壁になりたい。
冷たい風が吹いている。
君に届く風ならば、冷えぬように暖を持ち寄ろう。
暑い風が吹いている。
君に届く風ならば、熱で魘(うな)されぬように氷を持ち寄ろう。
風が吹いている。
私(わたし)と君の間を、遮る壁のように吹いている。
もし、もしも、生まれ変わる事が出来るならば、生まれ変わったら変えたかった事がある。それは、君に逢えた時に教えよう。
私と同じ時に、君も生まれ変わったら、再び逢える事を願おう。
生まれ変わったら、君は君でいて欲しい。何も変わらず、美しき君のままで …
――――― …
『かなう様』
声が聞こえる。嗚呼、この声を知っている。わたしだから。
夢の中の、わたしは、誰かを思い哀しんでいる。愛しいと思っているのに、傍に寄り添いたいと思っているのに、いつも誰かに邪魔される。
『かなう様、』
逢いたくて、恋しくて、愛しい人。想う度に、姿見掛ける度に、声が聞こえる度に、影を追い掛けるのに。涙止まらなくなるのに。また、邪魔される。
わたしの前に立ち、壁のように、あの人の姿を見せまいと拒む。親し気に身の毛よだつ声で、わたしを呼ぶ男。逃げれば追い掛ける男。執拗に追い詰める男。
わたしは、逃げたくて。そう、夢は必ず同じシーンで終わりを告げる。夢の中の、わたしは、執拗に追い掛ける男を振り切る為、来世に逃げる為、命を投げ出す。崖から海に落ちる。そのシーンで夢は終わる。目覚めた時、わたしは必ず泣いている。
最初のコメントを投稿しよう!