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   君は、風だ。  朝、日課のように書を認(したた)めていた私の目の前に突然現れ、荒々しい風のように私の心を荒らし、春の風のように私の周りを吹き飛ばし、夏の風のように私の心を癒し、秋の風のように私を包み、冬の風のように私の周りをも凍らせた。  君は、風なのだな。  私は、そなたに逢いたい。  また荒々しい風のように私の心を乱し、癒し、包み、愉快な気持ちにさせて欲しい。  いや、そなたを独り占めにしたい。  そなたは風だから、すぐに溶け込む。  景色にも、人の心にも、・・・私の心にも。  逢いたい、君に。  結局、名も聞けぬまま、君は突然消えてしまった。  あの日、私の目の前に現れたのと同じように、前触れもなく、突然に。  
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