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私(わたし)は、いや、ぼくは覚えている。いつの時代かは不明だけれど、ぼくは雅(みやび)な衣服を身に着けていた。まるで、韓服のような古(いにしえ)の皇族が着ていた服のような、平安時代の貴族が着た着物のような衣装だった。
だからか?口にする言葉も、筆で書き連ねる文字も、今のぼくには違和感だらけで。
今は左から横に書いていく文字も、覚えているのは右から縦に書いていく。それも、細い毛筆で。絵筆のようにしなやかに、毛筆のように墨を染み込ませた筆で、難解な字を書いていく。ノートでもない、書面に。紙の素材が今と違って、ざらついている。色も、少し黄色い。たまに、半紙のような紙に書いていく事も。読む書物も、紙の横に小さな穴を錐のようなもので空けて、麻紐を通して結んだような書物で。家は、日本家屋とは違った趣(おもむき)だけれど木造家屋で。全て、クッキリ覚えてはいない。覚えている風景も景色も様相も人の顔も声も朧気で、ただ何となく覚えている。
背景も霧に包まれた朧気なドラマまたは映画を見ているような、そんな記憶。
その頃の、ぼくは、物事を容易く考えず悩みに悩んだ揚げ句に行動する。かなり慎重なタイプのようで。ぼくに気安く声をかける男は、知り合いのようで。性格は、積極的で物事を考えるより行動に出るタイプのようで。ぼくと真逆な人間。気安く声をかけるから知り合いだと思っていたけれど。
その頃のぼくにとって、彼は好きでも嫌いでもないタイプのようで。
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