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  兎鳥 胡桃。ぼくの母親の名前。テレビに出る時は、旧姓の『佐脇』と名乗っている。読み方は、『さわき』。 兎鳥 霧。ぼくの名前。前世では『かなう』と呼ばれている。字は、知らない。 ぼくを、『かなう』と呼ぶ人は、覚えているので二人しかいない。前世のぼくが恋慕う女性と、気安く声をかけてくる男の二人。前世でのぼくは、恋慕う女性を奪われた。気安く声をかけてくる男も、彼女に惚れていて。ぼくが悩んでいる時に、掠め取るように奪った恋敵。彼女の心も奪った男。好きでも嫌いでもなかった感情が、彼女の声を思い出す度に憎悪に変わる。 ぼくは、今でも探しているのかもしれない。この時代で逢う確率が少ないのに。何故か逢えると思ってしまうのは、未だ彼女を恋慕っているのかもしれない。 今のぼくは、携帯小説にいる鈍感な主人公気質に似せている。女性陣が、ぼくの顔を見るや否や頬を赤らめるから。最初は、不思議がったけれど。祖母や葉華姉さんや旅館に来る常連客達の指摘等のお陰で、自分の顔がモデルのような『端正な顔立ち』で俗に言う『イケメン』らしいと判った。その頃から、女性陣は頬を赤らめたり照れたり。最悪、勝手に妄想してストーカー気質になったり。かなり迷惑している。 学校に通っても同じ。教師の中には、勝手に惚れて勝手にテストの難易度を下げたり。正直迷惑しているから、テスト期間の際は、ぼくの顔を見ても頬を赤らめたりしない教師や他の教師に理由を話してテスト問題用紙を改めて貰ったり別室でテスト受けてたり。本当、人間は顔じゃなく中身なのに。  
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