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獣道があるからそこを真っ直ぐ!!
「何これ?全然地図じゃないじゃん」
怪訝そうな顔で大吾は父に問いかける。すると父は微笑を浮かべながら大らかに笑い飛ばす。
「ははは!確かにそうだな。でも本当に書いてある通りなんだ。この辺に獣道は一つしかないから、そこを通っていけばいいんだよ。後は道を信じて真っ直ぐすすめ!」
笑いながら説明する父。それと対照に、大吾はいまいち浮かない表情をしている。
「・・ねぇ、父さん。そこにさ・・何しにいけばいいの?」
今まで笑い飛ばしてた父だが、急に静寂した。合図でも出すかのように、父は母に目を配り、何か冷蔵庫から取り出させようとしている。
「・・団子だ。」
その言葉とともにまた笑いだす父。母も微笑を浮かべながら、手に持った団子を大吾に渡す。
「ふふ。最近あそこに誰もお供え物替えに行ってないのよ。だから替えてきてほしいの。私たち、これからお客さんが来るからそっちで忙しいの。お願い出来る?」
予想と違う出来事に一瞬かたまったが、いつも通りの日常に、無垢な少年の表情を浮かべ返事をした。
「じゃあ、気をつけていくのよ。それから、ちゃんと手を合わせてくるのよ。後それから・・」
「分かったって!そんな心配しなくても大丈夫だよ」
母は神妙な表情を浮かべ、大吾を見つめた。
「・・そうよね。大吾ももう立派になったから大丈夫よね!じゃあね」
「うん。行ってきます!」
走り去る少年の姿はどんどん小さくなり、だんだんとフェードアウトしていく姿を、ただ見つめ続けていた。
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