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「ま、そんな簡単に諦められないか・・」
太った男は誰にも語りかけること無く、また独り言のように呟いた。すると青年は正方形の机から身を乗り出すように話しを始める。
「あ、そうだ拓ちゃん。巷の噂を聞いたんだけどさ・・。」
青年は軽く息を吸う。
「今、リカちゃん来てるらしいよ」
太った男の眼鏡が光を軽く反射した・・ような気がした。青年は気にすること無く話しを続ける。
「しかしまぁ、あんな有名な声優さんが外回りの仕事なんて珍しいねぇ、あ、有名だから外回りなんかすんのか」
急に男は勢いよく机に手をつき立ち上がり、青年を険しい表情で見つめる。
「公式で僕に知らない情報なんてない!!ってことは・・」
太った男の生唾を飲む音が聞こえた。それを見た青年は、口角をあげながら言葉を付け足す。
「プライベートって事だな」
急に太った男はリュックを背負い、扉の方へ向かう。
「ポテチの件はチャラだ!じゃ、いってくる!!」
さっそうと扉を閉めた。だんだんと足音が遠ざかっていくのが分かる。一人残された青年は、暫く扉を見つめた後、立ち上がり先ほどまで太った男が座っていたイスに腰をかけた。すると青年は、コンピュータの中を覗き込み何か探す動作をする。
「・・神山神社」
青年は画面を見つめたまま、何かを回想しているようだ。静止した空気がただ無常に流れていた・・。
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