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「・・もう、あんなことはやめてよ」
ため息をつきながら、ご飯を口に運ぶ女性。それに対して少年は意図的にきかないフリをしている。ごはんを凄まじい勢いで口に含んでは飲み込んでいる。
「ははは、どうしたんだ大悟も沙耶も」
そんな状況をみて大らかに笑い飛ばす父。母は皿洗いをしているのだろう。時折水が流れる音が耳に入ってくる。
「聞いてよお父さん!あんまり登っちゃダメって言ったのに、この子一番上まで登ってったのよ!」
「あ、ずるいぞねーちゃん。とーちゃんに言うなんて!だいたい登ってもダメなんて言わなかったじゃんかよ!!」
互いに睨み合う二人を見て、父は苦笑いを浮かべていた。暫くして台所と茶の間を繋ぐドアが開き、二人は体を震わし元の状態に戻った。
入ってきた母は、訝しげな目で二人を見たが、すぐさまに大悟の向かいに座った。
「あんまりお姉ちゃんに迷惑かけちゃダメよ。沙耶も明日から修学旅行なんだから早めに寝なさいね」
「へ?」
大吾はキョトンとした顔で、沙耶の顔を見つめる。その様子を見た母が短いため息をついた。
「明日から修学旅行なのよお姉ちゃん。二泊三日だから、その間は変な事しないでよ。」
険しい目つきで睨む母を見て、大吾は誤魔化すように笑った。
沙耶は、静かに皿を持って立ち上がり、台所へと向かった。置いたと思ったら戻ってきて、台所と茶の間を結ぶ扉に立つ。
「じゃ、そろそろ寝るから。」
「ちゃんと持っていくもの確認してのよ。」
沙耶は、振り向きながら手をあげ、流れるように「お休みなさ~い」といい、寝室へと向かった。
「大吾も早くねなさいよ。もう夜も遅いんだから」
「ふぁ~い」
あくびをしながら、重い身体を起こした大吾は、「お休み」と言いつつ寝室へと向かった
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