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怯え切った表情が暗がりの中、電気スタンドの明かりでぼんやりと映し出される。しかしそれ以上に目の前からゆっくりと、着実に前から向かってくる男の影は大きかった。
そして、その男の息がかかる距離まで詰められる。恐怖のせいか、先程までの強気な眼差しはなくなり、ただただ回らない呂律を動かすのに必死だ。
「た、たす、し、しにたく・・」
その言葉を聞いた男はニヤリと笑い目を見据えた。
刹那、好青年の世界は暗転した
。
「また情報無しか・・。」
そう漏らすように吐いた呟きとともに部屋を後にした。
すぐさまホテルから外へと向かう通路を歩き出し、暫くして出口の扉へと到着する。当然ながらカウンターに1人立ってはいたが、特に気にも止める事なく男を見送った。
外へでた瞬間体に取り込まれる新鮮な空気、周りの景色は少々靄がかかっていて見づらい。男はおもむろにポケットに手を入れ、携帯端末を開いた。
「まだ4:00か・・。」
その虚しい言葉が心を冷まし、立秋の肌寒い空気もまた体を冷やす。
思わず身ぶるいした男は、羽織ったコートにすがるように身に包ませ、霧の世界に消えていった 。
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