オニノカミノ

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見て分かるのは、床に転がされた空の菓子袋。様子としては大した焦燥感は感じ取れないが、口々に発する言葉から少なからずの焦りは感じられる。 「また買いにいくか・・、いや、そんな余裕は無いしな。んー、どうっすかな~・・」 色々な策を練っているが、うまくまとまらないらしい。先程から喋り終わるごとに首を横に振っている。 「んーーっ!!はぁぁ~・・」 かなり豪快な背伸びが、今までの疲れを物語ってかのようだ。そしてこの背伸びが、これから起こるであろう恐怖を、体現していた事に誰も気づいていなかった。 刹那、恐怖は始まった。ぽっちゃり男は掛け声とともに立ち上がり、ゆったりと青年の方に顔を向ける。その振り向き動作よりも素早く、青年は空の菓子袋を自分の懐に隠す。 太った男は青年の顔を見るなり、小さくため息をつき、怠そうに腰を下ろした。 「なんだ帰ってきてたのかよぉ。勝手に入んなってこの前も言ったろ」 低くまとわりつくような声で、青年に注意を促す。しかし、青年にその言葉を受け入れる様子はない。 「だったらチェーンまたは鍵を閉めろ」 力のない適当さが、逆にこころに重くのしかかる。さすがのぽっちゃり男もその言葉を聞き、先程より大きいため息をついた。 「お前・・、今度はどうせ、なんで閉めたんだーとか言うんだろ」 そう言いつつ、右手をテーブルへと伸ばす。しかし、机上には何もない。物を掴む動作を繰り返し行っている。やっと諦めたのかと思いきや、鋭い目つきで青年を見据えだした。
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