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「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」
何度も何度も頭を下げ、先程とは打って代わり笑みがこぼれていた。
この時ロイは何とも言いがたい感情に思考が支配される。
『この時』と言うよりか患者の生存を少しでも頷ける可能性を家族や親族に伝えたときにとる彼らの対応。
今のように安心した面持ちで心底安心したように涙を流しながら礼を言う、その姿勢。
第三者的には感動する場面だろうが実際の当事者、もといロイにとっては感動と言う綺麗事では済まされないのだ。
命。
人の生死をこの手で左右させてしまうと言う、プレッシャー。
自信がない訳ではない。
もて余しはしないがそれなりの知識や技術があるロイでも、拭いきれない一抹の不安が残る。
『もしも』のことを考えると行き場のない不安に襲われる。
その現実味を帯びない不安を消すように、少しでも多くの命を救えるように知識を肥やし、技術を身に付けたのだ。
そしてそれでも消えないときは助手であり人生のパートナーであるパティーの力を借りるのだ。
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