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お世辞でもけして大きいとは言えない民間の医療所が町外れに建っている。 普段ならあり得ないほどの患者が、次々と運び込まれる。 しかもその大半は熱中症患者だ。 病室も人でもろくに無いので廊下や待合室などが患者でごった返していた。 「おいおい。何だってこんなに患者が多いんだ?」 そう愚痴を漏らしながら、山のように積み重なれた資料に目を通す彼はこの病院の院長。 ロイ・ジェネック。35才だ。 唇が薄く、目は堀が深くぱっちり二重の二枚目。イケメンだ。 さっぱりと切られた金髪と青い瞳が好青年のような印象を与える。 「連日の猛暑日続きで熱中症患者があとを耐えないんです。」 そう答えたのは院長、ロイの助手パティー・バチルダ。 肌が黒く厚い唇に、天井に届きそうなほど長いまつげが大人びた印象を与える。 髪の毛は天然パーマだが故意にカールをかけたように美しい。 「あぁ、そりゃしってる。耳にタコができるぐらい聞いた。」 目を通し終えた資料をパティーに持たせると、白衣を纏いながら患者の元へ急ぐ。 「…ただ、言ってみただけだ。」 考える素振りをしてロイは苦笑しながら肩をくすめる。 そうじゃなきゃやってられないよ、と言いたげな目だった。
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