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「ってか、ちゃんと考えてきたんだろうな!新曲!」
『うるさい。喋らないで』
「はっ!?」
『ちゃんと考えてるわよ』
小雪はカバンの中から数枚の紙を渡した。そこにはいくつも書き直された楽譜と1枚の歌詞があった。
受け取った優亮の目はギラギラとしていて、食い入るように楽譜を見ていた。
『…手直しいるなら早めに言ってね。あと、いくつかコピーしてあるからこれは純達に渡して』
「今回のはまじ純さんが考えなくてよかったわ。純さん、メタル系しか作れないもんよーっ。俺、またメタル叩かなきゃならないと思うと腕が痛くな……」
当然黙った優亮を不思議そうに見つめる小雪は、優亮の肩に手が置かれてるのを見つけた。そして、また優亮を見ると顔が真っ青になっている。
「メタルしか書けなくて悪かったなぁ、優亮くんよぉ」
『……純先輩』
「おはよ、小雪。今日も腹黒全開か?」
『その質問意味わかんないんで消えて下さい』
「…すまん。だから真顔でこっち見るな。」
お手上げだ、という感じに両腕を上にあげてニヤリと笑う。そんな純にさすがの小雪も呆れていた。
女たらしで有名な3年の飛鳥森純。音楽科ピアノ専攻。実家は有名な茶道の家元。容姿端麗とは彼を指すのではないかというくらいの整った顔をしている。本人も落ちない女はいないとばかりに、知らない女に始まり、彼氏持ちの女に旦那持ちの女、その女の数知れず。
しかし、この小雪だけは違った。
純が小雪に話しかけた途端、
『…は?あたしに話しかけないでくれません?その辺のゴミ屑と一緒にされては困るので』
の一言であっけなく終わったそうだ。
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