第一話

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「参ったな…」 巻き戻しによって起こるデメリットの一つである、『両親からは自分が見えなくなってしまうこと』。 コロネに原因を聞いてみたが、彼女は「分からない」の一点張りだったので諦めた。 今だから言ってしまうが、僕の父さん(桐島 真一)は二年前に病気で他界してしまった。 そのため今は母さん(桐島 花菜)と、 成人になった兄(桐島 拓真)、 そして不登校になってしまった弟(桐島 佑真)。 そして僕、桐島 透真の4人家族で暮らしていた。 「見えなくなるのは両親だけか?」 「ううん。兄弟姉妹にも見えないの。義兄弟とかならまだ見えるみたいだけど…」 僕はほんの少しだけほっとした。これで母さんだけが見えないとなると大変だった。 「存在が消える訳じゃないんだろ?」 「うん。一応家族からすると君は『お味噌汁の具を買いに行ったきり帰ってこない』って状態になるの。」 それは困る。 確かに僕は母さんに味噌汁の具を買ってきて、と頼まれて買いに行った。 ちなみに、渡されたお金が多かったので僕は魔がさして、ゲーム情報雑誌を買ってしまった。 「あのね透真君。巻き戻されたんだから、君の小さな悪行も無かったことにされるのよ。あとそんなに困るの?」 「かなり困る。相当困る。」 「どうして?」 「…コロネは勘違いをしているかも知れないから言っとく。僕はゲーム情報雑誌を買ったことについて困ってるんじゃないんだ。僕は…」 そこまで言ったところで、突然部屋のドアが開いた。 「あれ?透真?何でここにいるんだ?買い物は終わったのか?」 そこにいたのは兄、拓真だった。 いや、そういう問題じゃない。コロネ。これはどう言う事だ?焦ってないで教えてくれ。
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