Story7.灰音りかの苦悩

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「また今日も、字に迷いが出てますね」 「っ!」 あたしの心のオアシスだった(既に過去になりそう)部活の時間が、今や気を抜けない時間になりつつあった。 それはもちろん、この人。 佐々野くんのせい。 少し前までは空気の存在でしかなかったのに、ここ最近、やたらと心をついてくる。 「な、何も迷ってなんかいませんが!?」 「打ち込みの段階で迷ってます。…何かあったんですか?」 「…っ」 ジッ、と。 眼鏡越しに見据えられる。 ………あれ? 何だろう。 少しだけ、何かが心の中をざわつかせた。 だけどパッと視線を逸らして、新しい紙を取る。 「いや、本当に。何も迷ってなどおりません!」 強く返事をして、あたしは会話を強制終了させた。
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