Story7.灰音りかの苦悩

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『話を聞く限り、別室とはいえ、鍵のない部屋で生活しているんですよね?…無防備極まりないです』 楽しみだった書展が、全く楽しめなかった。 佐々野くんの言葉を思い出し、ズーンと重い気持ちで屋敷に帰った。 初日と、あの一件の夜こそ警戒したが、今やすっかり警戒心も解けていた。 ……それって、年ごろの乙女としてどぉよ!? 頭を抱えて苦悩する。 「書展は楽しめた?」 「ぎゃっ!!!」 「――――、」 そんなことを考えている間に、いつの間にか奴の部屋へとたどり着いていた。 奴の声にびっくりして、一瞬で3メートルは距離を取ってしまった。 離れた距離を見て、奴の眉が不機嫌に寄せられる。 「…怪しいな」 「え?」 「書展見に行ったって、嘘だろ」 奴が高圧的に、あたしを見下ろした。
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