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ジッとこちらを見ていた奴が無表情のまま唇を開いた。
「あるね。お前は男を全く分かってない」
「――!」
こいつも、佐々野くんも。
いったいなんだって言うんだ。
「いったいなんなの…?佐々野くんも今日、同じようなこと言ってた…」
「それがお前を女として見てる証拠だろ。ほら危ない」
ふいっと視線を逸らして奴が言う。
「危ないって!佐々野くんに限ってそんなことあるわけない!」
「それが危ないって言ってんだよ。男を知らないくせに偉そうに」
「偉そうに!?」
ヒステリックに聞き返した。
それでも奴はふんっと顔を背けている。
ぎりぎりと奥歯を噛みしめて、拳を握った。
「…だったらあんたは何なのよ。あんたにも同じこと言えるでしょ!…この前もあんなことしといて…。あたしは必死に、なかったことにしようとしてるのに…、それじゃあんたもあたしのこと女として見てるって言ってるのと一緒だよ!?」
「…見てるよ。お前が想像もしてないようなこと、考えてるよ」
………………。
へ?
突風が、体中を駆け抜けた。
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