Story7.灰音りかの苦悩

20/27
前へ
/1021ページ
次へ
「っ!!」 その瞬間、バッと腕で体を覆った。 こちらを見据える奴の瞳に、服の下を覗かれているような、心許ない感覚が走った。 バクバクと心臓が高鳴る。 「…気付いてなかったの?」 「―――!?」 凝視していたはずなのに、奴の手があたしの頬を捉えるまでその手の動きに気付けなかった。 「な、なにを…!?」 頬に触れられ、あたしはずりずりと後ずさりする。 だけど奴の手は離れることなく、あたしを追い詰める。 「…俺が頭ん中で、お前のことめちゃくちゃに抱いてること」 ……え、え…、え――――っっ!?!??! 奴の言葉が投下された瞬間、背後に隕石が落下した。 ピギャーン!!! ななななななにを言ってるのこいつ!!! 「!?」 その瞬間、奴の手があたしの頭に回った。 目の前に、少しまぶたを落とした顔。 その瞳の先が、あたしの唇を捉えている。 長いまつげをこちらに見せて、その端正な顔立ちがゆっくりとあたしに近づいた。 …待て、待て!待て~~~!!! だけど声にならない。 パクパクとパニック。 頭の中はパニックなのに、こいつの綺麗な唇から目が離せないぃぃぃぃ!!!
/1021ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3922人が本棚に入れています
本棚に追加