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ハレイヤは、走り続けます。
自身の愁いを誤魔化すために。
走ってると、ハレイヤは一列の行列にすれ違いました。
手を縛られた女性が何人も連なって列になっている所を見ると、売られた奴隷でしょうか。
ハレイヤは、その行列の中にいる、黒髪を靡かせる美しい少女に目を奪われました。
遠い場所から売られてきたのでしょうか、少女の姿はこの町の人とは肌の色も、髪の色も、顔の形も異なっています。
俯いているその顔からは、涙がポロポロと流れていました。
ハレイヤはその涙さえ美しい、愛おしいと思いました。
少女に目を、心を奪われ、その場に立ち尽くしていました。
少女が不意にこちらへ向きました。目が合い、美しい顔立ちに息を飲みました。
完全な一目惚れです。
少女は、大きな門をくぐり、ゴテゴテした趣味の悪い屋敷の中に入っていきました。
「あそこがあの娘の奉公先……。」
少女が売られた金持ちの家を見つめた後、声にならない声で叫びながら、その場を去ったのでした。
「ぅっ…ぐっ……ーーーーーっ!!!」
やはりこの世は理不尽だ。
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