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ハレイヤは、店主に見つからないように路地に入り、物陰に身を潜めました。
「畜生!どこ行きやがった!」
店主は、通りの真ん中に止まり、辺りを見渡し始めました。
しかし、困ったことに店主の前を通らないと家には帰れません。
仕方なくハレイヤは、機会を窺い店主の前を勢いよく横切りました。
「居やがったな!待ちやがれ小僧!」
ハレイヤに気付いた店主は大声を上げました。
店主はハレイヤを追いかけようとするも、全く追いつけません。
甘い汁を啜り、苦労する事なくただ金を湯水のように使ってきた彼らはブクブクと醜い。
その醜く肥えたその体では、ろくに食べることも出来ていない細く痩せているハレイヤを捕まえるどころか、触れることすら出来なかったのです。
店主の手をするりと逃げていくハレイヤの姿は、まるで風の様でした。
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