ふくたろう

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しかし、ふくたろうのその夢は、戦争によって少し遠のいてしまっていました。 ふくたろうの住む街は、漁業の拠点であるとともに、重要な軍事拠点でもあったため、敵国の容赦ない空爆を受け、戦争が終わった頃には大半が焼け野原になっていました。 ふくたろうの父親が乗っていた漁船は、港とともに灰燼に帰し、父親も戦死は免れたものの、体をこわしてしまっていました。 ふくたろうは“ふく”漁をしたくとも、乗る船もなく、また、船を買うお金もありません。 それどころか、家族の明日の食べ物のことすらわからない状態でした。 ふくたろうは、自分の夢はひとまずおいといて、とにかく働こう、と決めました。 幸い、戦争が終わり、兵隊に行っていた人たちが戻り始めていたため、街は活気を取り戻しはじめていました。 焼け野原だった街にはバラックが立ち並び、急ごしらえで修復された港には、難を逃れた船たちが再びそこから海に繰り出していました。
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