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「いたた…何が起きたんだ…上手くいった筈なのに…!」
博士はアフロになった頭を掻きながら立ち上がり、辺りを見廻した。
「何だ…これは…」
そこには家や研究施設などなく、辺り一帯には草原が広がっていた。
「どういうことだ…」
博士は言葉を失った。自分が七十年かけて作った研究の成果の詰まった建物などそこには無かった。
「こんなに手がしわくちゃになるまで頑張ったのに…。」
と言い、彼は皺もなにもない手で毛むくじゃらの顔を覆った。
その時彼は異変に気付いた。
「髭?手に皺がない?」
彼はアフロになる前日に髭を剃っていたのだ。そして手に皺が無い!
彼は焦った。顔を触って見ると低かった鼻はエベレストより高く、目のくぼみはマリアナ海溝より深く、顎には尻が出来ていた。
「なんじゃこりゃあああ!!」
彼は思い切り叫んだ。自分が自分ではなくなっていたのだ。その時の焦りようったらない。彼は思わず立ち上がり走り出した。五百メートル程走って彼は急に立ち止まった。
「そういやダスター君達は?」
博士は助手達の事を思い出した。あの「金の錬成実験」の時には自分を含め四人立ち会っていた。
「彼等を捜さねば。」と思った彼は今来た道を戻った。
五時間は経ったろうか。もう日がくれようという頃、彼の顔はゾンビのようになっていた。空腹と疲労に満ちた顔はゾンビに等しかった。目がゾンビのように白眼を剥いていたせいか、足下にあった木の根に気づかなかった。
「ビターーン!!」
彼はそのまま気絶してしまったのか起き上がって来なかった。
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