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. 顔を上げたその子は、大塚だった。 大きな目をぱちくりさせて、彼は立ち上がった。 が、私が見下ろすと、すぐにうつむいてしまった。 結局あれから、一言も話してない。 最初こそ、おはようくらいは言ったけど、反応がないからやめた。 まだ、よろしくも言われてないし。 私は一気に不機嫌になった。 「…ぁ、あのっ」 大塚は、上ずった声を上げた。 高い。 私と違って。 何から何まで正反対だな、まったく。 「何」 普通に返事をした。 それだけなのに、大塚は怯えて、またうつむいた。 頭の中で、ブチ、と何かが切れる音がした。 「あのさ、何そんなビビッてんの? 腹立つんだけど」 一度言いたいことを言うと、もう止まらない。 私は一気にまくしたてた。 何を言ったかは、正確には覚えてなかった。 ただ、何を言っても無反応の大塚を見て、腹が立って、最後に吐き捨てた言葉は、ちゃんと覚えてる。
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