8/9
前へ
/42ページ
次へ
. 「だいたい、見た目といい中身といい、女々しいんだよ。 キモい」 大塚が顔を上げた。 自分でもびっくりしていた。 そんなこと思ってなかったのに。 キモい、だなんて。 むしろかわいいと思ってた。 こんな風になれたらなって。 呆然としてると、大塚の目が潤み始めた。 その目で、私をキッと睨む。 胸の辺りが痛かった。 でも、ごめんなんて言えなくて、私はその場から逃げるように立ち去った。 言わなきゃいけないことが言えないのは、私も一緒だ。 階段を降りてる途中、後ろを振り返ってみた。 ドアの向こうで、小さな背中が、少し震えていた。 空は、灰色になっていた。 と思う。 よく見てなかった。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加