30人が本棚に入れています
本棚に追加
.
大塚は、さっきと同じところに突っ立っていた。
何か言いたそうにしている。
ありがとうとか、そんな感じだろう。
私は気づかないフリをして、立ち去ろうとした。
その時だった。
「カッコいい…」
我慢の限界が訪れたのは。
気づいたら、私は大塚の胸ぐらをつかんでいた。
シャツにプリントされたネズミが、くしゃくしゃに歪んでる。
大塚は動じない。
イライラした。
「いい加減にしろよ。
褒めてるつもりか」
思ってたよりも低い声が出た。
だからカッコいいなんて言われちゃうんだよ、バカ。
逆ギレすんなよ。
頭の中で怒られた。
でも、止まらない。
「あのな、私は女だ。
カッコいいなんて言われたって嬉しくない。
バカにされた方がまだいい」
「……」
反論も何もなく、ただ私を見つめる大塚。
何かを見極めようとしてるみたいだ。
何を?
私の本心?
誰が見せるか、ボケ。
お前もどうせ、周りと一緒なんだろ。
見せたって気づかないんだろ。
だったら見せないよ、絶対。
最初のコメントを投稿しよう!