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. 大塚は、さっきと同じところに突っ立っていた。 何か言いたそうにしている。 ありがとうとか、そんな感じだろう。 私は気づかないフリをして、立ち去ろうとした。 その時だった。 「カッコいい…」 我慢の限界が訪れたのは。 気づいたら、私は大塚の胸ぐらをつかんでいた。 シャツにプリントされたネズミが、くしゃくしゃに歪んでる。 大塚は動じない。 イライラした。 「いい加減にしろよ。 褒めてるつもりか」 思ってたよりも低い声が出た。 だからカッコいいなんて言われちゃうんだよ、バカ。 逆ギレすんなよ。 頭の中で怒られた。 でも、止まらない。 「あのな、私は女だ。 カッコいいなんて言われたって嬉しくない。 バカにされた方がまだいい」 「……」 反論も何もなく、ただ私を見つめる大塚。 何かを見極めようとしてるみたいだ。 何を? 私の本心? 誰が見せるか、ボケ。 お前もどうせ、周りと一緒なんだろ。 見せたって気づかないんだろ。 だったら見せないよ、絶対。
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