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「汚れるよ、服」
「洗えばいいもん」
「そういう問題じゃないだろ。
人混みだったら蹴られるし、もしかしたら踏まれるかもよ?」
「……」
あれ?
「大塚?」
空を見ている大塚を見る。
さっきまでの笑顔がない。
楽しそうじゃない。
濡れた目が、日光を受けて輝いている。
「…ぁ」
禁句だった。
私は内心で舌打ちした。
私は馬鹿か。
守ってやるって決めたのに。
あんなこと、思い出せないくらい、楽しい毎日を送らせてやろうと思ったのに。
味方なのに。
「……ごめん」
「…ううん。
いつまでもうじうじしてるボクが悪いの」
「…」
「…雲、出てきたね。
綿あめみたい」
ムリヤリ笑うな、アホ。
目が若干潤んでるんだよ。
「…うん」
「そうだ、夏祭り行こうよ。
今週の土日にあったよね。
どっちがいい?」
「…」
「真雪ちゃん」
「…日曜」
「うん、わかった。
綿あめとか、リンゴあめとか、いっぱい食べようね!」
胸が、キュウ、と締め付けられた。
やめて。
そんな目をしないで。
私のせいなのに、私はそんなことを考えてる。
嫌になる。
「…うん」
私は、頷くしかできなかった。
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