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. 今日は、雲一つない快晴だ。 清々しい気持ちにはなるけど、私は、白いアイツらが浮いてる空のほうが好きだ。 空っぽいし、あのふわふわを見てると、なんだか眠たくなる。 真雪ちゃんはいつも眠いんでしょ、と、大塚の声がしてきそうだ。 私は上体を起こした。 だって屋上は寝心地がいいんだもん、と心の中で言い返す。 私の名前は野村真雪(マユキ)。 高校二年生の帰宅部で、学力は中の下あたり。 趣味は? って聞かれたら、多分、 昼寝。 って答えると思う。 暇さえあれば寝てる。 おかげで、寝不足にだけはなったことがない。 だから、目付きが悪いのはそのせいじゃない。 元からだ。 「またお昼寝してたの? 真雪ちゃん」 屋上に一つだけあるドアの方から、高い声がした。 そのドアの向こうには、階下に降りる階段がある。 そっちに目を向けると、背の小さな男子生徒が立っていた。 「大塚か」 えへへ、と軽やかに笑う男子生徒。 白いほっぺたが、ほんのりと赤らんでいる。 私の小麦色のそれとは大違いだ。 このくそ暑い日差しの下に出ても、コイツの肌は黒くならないんだろうな。 羨ましい。
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