30人が本棚に入れています
本棚に追加
序
.
今日は、雲一つない快晴だ。
清々しい気持ちにはなるけど、私は、白いアイツらが浮いてる空のほうが好きだ。
空っぽいし、あのふわふわを見てると、なんだか眠たくなる。
真雪ちゃんはいつも眠いんでしょ、と、大塚の声がしてきそうだ。
私は上体を起こした。
だって屋上は寝心地がいいんだもん、と心の中で言い返す。
私の名前は野村真雪(マユキ)。
高校二年生の帰宅部で、学力は中の下あたり。
趣味は?
って聞かれたら、多分、
昼寝。
って答えると思う。
暇さえあれば寝てる。
おかげで、寝不足にだけはなったことがない。
だから、目付きが悪いのはそのせいじゃない。
元からだ。
「またお昼寝してたの?
真雪ちゃん」
屋上に一つだけあるドアの方から、高い声がした。
そのドアの向こうには、階下に降りる階段がある。
そっちに目を向けると、背の小さな男子生徒が立っていた。
「大塚か」
えへへ、と軽やかに笑う男子生徒。
白いほっぺたが、ほんのりと赤らんでいる。
私の小麦色のそれとは大違いだ。
このくそ暑い日差しの下に出ても、コイツの肌は黒くならないんだろうな。
羨ましい。
最初のコメントを投稿しよう!