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「――――ふぁ・・・」
これで何度目だろうか。いちいち数なんて数えていないが、短い間隔で欠伸をしていることは確かだ。
(・・・やっぱり、昨日の徹夜はきつかったな)
「・・・冬美っ!!聞いてるの!?」
「へ!?あ、ごめん。なんだっけ・・・」
「だーかーら、彼氏にプロポーズされたって話!!」
「ああ、プロポーズね・・・」
「ねえ、本当に大丈夫?最近ずっとこんな調子じゃない。どうかしたの?」
「ん、なんていうか、上司からの仕事を断れなくてね。そのせいでずっと残業と徹夜続き」
「はあ!?残業って、アンタ何日続いてるわけ!?」
「えーと・・・、三日ぐらいかな」
まあ、三日という数は自分が覚えている限りの日数なので、実際はかなり残業をしているはずだ。
「冬美、あんたそんなに毎日が仕事仕事で楽しいの?まだ二十代前半でしょ。もう少し人生楽しまないと」
「でも、今の生活は楽しいよ?そりゃあ、徹夜続きで疲れるけど、たまに服部さんが一緒に残ってくれるし・・・」
「へえ~。つまり、服部さんのことが好きなんだ」
友人の問いに、私は黙って頷いた。
「相手は、冬美のことどう思ってるの?脈アリ?」
「ない・・・と思う・・・」
そうだ。自分には恋愛感情があっても、相手にはそんな感情は微塵もない。第一、そんな感情があったら今頃もっと深い仲になっているはずだ。
「絶賛片思い中ってわけね。――――あっ、そうそう!今朝、面白いチラシが届いてたんだけど」
「面白いチラシ?」
「そ。今のアンタにぴったりだと思うけど」
友人がカバンから取り出したそれは、少なからず、私の人生に影響をおよぼすものだった。
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