12人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、その後焔は自分の胸をチラッと見る。
(ふーん、阿狼は貧乳好きなのね・・・。貧乳のどこがいいのよ。私はよくまな板だとか、どっちが背中かわかんないとかからかわれたからコンプレックス以外の何物でもないのに。)
焔は自分の胸をもう一度見てため息をついた。
その後、数十分走ると山を貫いたトンネルが見えてきた。
「これが『片凪(カタナギ)トンネル』ね。」
焔はトンネル横の小さな駐車場にパトカーを止める。そして三人はパトカーから降りる。
「高速道路なのに車が一台も通りませんね。」
「たぶん、怪奇現象のせいでみんなこのトンネルを避けるんだろう。」
「ええ、おそらくそうよ。そして今夜も起こるはずだわ。行きましょう。」
三人はトンネルの中に入る。このトンネルは電灯が一列に設置されている一般的なトンネルである。1時間ほど調査を続けたとき、一台の車が通り掛かる。
「車が来ましたよ!」
阿狼と焔は反対車線に飛び移り、陣介は空を飛んで避けた。
通り掛かかった車の屋根には折りたたみ自転車がくくりつけられていた。しかし、その直後三人は驚くべき光景を目にする。
車の屋根に自転車をくくりつけている紐が一瞬でブチッと音をたてて切れ、そして自転車は宙に浮いた。車の運転手はそれに気づかず行ってしまった。
「ああ、自転車が盗まれた!?」
「阿狼、追うぞ!こいつが怪奇現象の元凶かもしれねぇ。」
陣介は飛んで、阿狼と焔は走って宙に浮いて滑るように逃げる自転車を追いかける。やがてトンネルの出口が見えてきた。
そのとき陣介が扇子を抜く。
「あそこから逃げるつもりか?そうはさせえねぇ!『疾風』!」
陣介の扇子から風が放たれる。その風は矢のように飛び自転車に当たる。
「ぐはっ!?」
突然、なにもない場所から声がする。その後、自転車が落下するが、また別の何かも落下してきた。
最初のコメントを投稿しよう!