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「俺はもともと、この山に住んでいた。昔は山を登る人間に気分でいたずらをしたり、迷ったやつを麓まで案内してやったりしていた。その行動のおかげで山の麓の村人たちが祠を建ててくれた。そこが俺の唯一の居場所だった・・・しかしな、時が経ってこの山に高速道路ができちまった。しかもトンネルも造りやがった!そのせいで俺の山は荒れ、祠も取り壊されちまったんだ!」
「そうだったんだ・・・・」
阿狼は少し手錠をかけるのをためらう。
「何してんだ、阿狼!早く捕まえろ!」
しかし、陣介が叫んだとき、阿狼が我に帰ったときに運悪く車が通り掛かる。その瞬間、鎌鼬の目が光った。
鎌鼬は隙をついて逃げ出す。そして通り掛かかった車のボンネットに乗り、
ガシャーーン!
フロントガラスを鎌で叩き割った。
「うわぁ!」
その車の運転手は驚いてハンドルを切る。車は思い切り道を外れ、阿狼に向かってきた。
「うわっ!?」
鎌鼬の言葉に立ち尽くしていた阿狼は向かってきた車に撥ねられボンネットにたたきつけられる。そのままトンネルの壁まで運ばれる。そして、ドスッと鈍い音がした。
「阿狼!」
陣介が叫ぶ。阿狼は走ってきた車を避けることはできたはずだった。しかし、それが間に合わず阿狼は車と壁に挟まれてしまったのだ。いくら阿狼が人狼といえど車に轢かれたら無事では済まない。
(やっぱりだめか。そうだよな、トンネルじゃ月の光が届かないか・・・でも、もしかしたら何とかできるって・・・思ったけど・・)
薄れていく意識の中、阿狼の心は無念さに苛まれていた。
「阿狼、何で避けられなかったのよ・・・!」
焔も悔やむように言う。
幸か不幸か、阿狼が肉壁になったため運転手は無傷であった。しかし、衝撃が強かったのか気絶している。すかさず鎌鼬は運転手に飛び掛かると鎌を首にかける。
「おい、こいつがどうなってもいいのか?ポリ公。」
「くそっ、人質を取られた。」
焔は剣を構え、陣介は扇子を抜こうとする。
「来るな!それ以上近づいたらこいつを殺すぞ!早く武器をしまって消え失せろ!」
「やめなさい!あんたはこれ以上罪を重ねるつもり?」
「黙れ!俺にはもう失うものはない。今さら罪人になっても関係ねぇよ!」
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